不良老人とその予備軍のための読書案内 その1

局員Mです。私事ですがただいま絶賛40代、そろそろ生まれ落ちた瞬間よりも晩年の方が近いとういう折り返しに差しかかってまいりました。将来死ななければ必ず年寄りになるのは間違いなく、その上死ぬのは100%の確率で逃れようがありません。

昔から死ぬことを怖いと思ったことは何故かほとんどない私ですが、痛みや病気は極力避けたく、やがて来る身近な人々の病老死については戦々恐々。その不安をどうにか解消したいと思っても、こちらはむしろ自分のことではないので色々割り切れません。そしてそんなキモチをどうにか落ち着かせたいと手に取るのは、先人の書いた本たちです。

毒書のすすめ

世に悩める人が多いジャンルはまた、出版される本もの数も多いもので、膨大な本の中からどれか、というのも迷うところですが、今回のタイトル、「不良老人とその予備軍のための読書案内」といたしました。品格があり、尊敬される年配者たれ、みたいなことを説くような本は正直あまり面白いこともありません。

目の覚めるような毒やジワジワしびれる毒を持ちつつ、読後には何かが変わっているような、そんな刺激的な読み物をむしろ読みたい薦めたい。ということで、アウトローで気骨のあるお年寄りとその予備軍に今回すすめる本はこちら。

深沢七郎『楢山節考』

深沢七郎という書き手を知ったのは私がまだ20代の頃、文学賞を取って有名になったあとも、百姓仕事や回転焼き屋をやりつつ、ギターをひいて歌も歌うという妙なプロフィールにも興味をそそられました。その深沢七郎の代表作がかの『楢山節考』です。そしてご存知の方も多いでしょうが、この小説の主題は「姥捨て」です。
『楢山節考』はもちろんフィクションですが、老人や嬰児を捨てる口減らしという習慣は、貧しい山村では実際にあったことです。明るい介護をテーマにしたこちらのブログで、いきなりこれか?!という反応はごもっともなことですが、この作品は介護をする人にもされる人にもご一読をおすすめしたい。ちなみに短編なので、すぐに読み終わります。

本を読んでいる間、私の意識はその本の登場人物や語り手の中に入り込み、その人の視線で物語の中に入っていきます。この小説では、捨てられる側の老母おりんの視点に立ったり、ある時は捨てる側の息子である辰平の視点に立ったりしながら読むのです。

双方にとって残酷な話だと思いつつ、この話を読んでから尊厳死のことなどを論じますと、また違った側面があらわれる気がします。毒にも薬にもならない健全な読書に飽きた大人のみなさま。ぜひ一度お試しください。